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【新作レビュー】アス — 新感覚社会派ホラーを徹底解説

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こんにちは、えむだぎあです。

9月になりだんだんと過ごしやすい日が増えてくるようになってきました。

私は今月になっても変わらずに映画を観続けているのですが、先日の9月6日(金)に公開された映画「アス」について今回はまとめてみました。

本記事では、

  • これから「アス」を観に行こうかな
  • 「アス」を観たけどよく分からなかった

という方々に向けて、見どころやレビューを書いていきたいと思います。

この映画は「ゲット・アウト」という映画で新時代のホラー映画を生み出し、アカデミー賞脚本賞を受賞したジョーダン・ピール監督の2作品目の映画となっています。

日本よりも先駆けてアメリカで公開されたのですが、そこで爆発的にヒットしたということで、日本でも今月から上映がスタートしています。

ホラー映画でありながら、どこか社会に向けたメッセージが込められている作品であるため、事前にカギとなるテーマを理解したうえで鑑賞することをおすすめします。

記事の内容

  1. 「アス」の概要
  2. 「アス」の見どころ
  3. 「アス」を観た感想(ネタバレあり)

記事の前半部分では、まだこの映画を観たことがない人に向けて見どころや事前に押さえておきたいテーマを紹介していきます。

後半部分では実際に映画を鑑賞したレビューをしていきながら、本作に込められたメッセージについて解説していきます。

「アス」の概要

あらすじ

”わたしたち”がやってくる
アデレートは夫のゲイブ、娘のゾーラ、息子のジェイソンと共に夏休みを過ごす為、幼少期に住んでいた、カリフォルニア州サンタクルーズの家を訪れる。
早速、友人達と一緒にビーチへ行くが、不気味な偶然に見舞われたことで、過去の原因不明で未解決なトラウマがフラッシュバックする。
やがて、家族の身に恐ろしい事が起こるという妄想を強めていくアデレート。
その夜、家の前に自分達とそっくりな”わたしたち”がやってくる・・・。(公式HPより抜粋)

キャスト

    ルピタ・ニョンゴ
    ウィンストン・デューク
    シャハディ・ライト・ジョセフ
    エヴァン・アレックス
    エリザベス・モス
    ティム・ハイデッカー
    カリ・シェルドン
    ノエル・シェルドン

スタッフ

    監督・脚本・製作:ジョーダン・ピール
    製作:ジェイソン・ブラム、ショーン・マッキトリック,p.g.a.、イアン・クーパー,p.g.a.
    製作総指揮:ダニエル・ルピ、ベアトリス・セケイラ
    撮影監督:マイケル・ジオラキス
    プロダクション・デザイン:ルース・デ・ヨンク
    編集:ニコラス・モンスール
    衣装デザイン:キム・バレット
    視覚効果監修:グレイディ・コファー
    音楽:マイケル・エイブルズ

「アス」の見どころ

"わたしたち"に襲われる恐怖

前作「ゲット・アウト」では、人種差別という問題を逆手にとって誰も味わったことのない恐怖を生み出したジョーダン・ピールですが、本作では自分たちとまったく同じ存在である"わたしたち"に襲われる恐怖を描いています。

ドッペルゲンガーという人々にとって身近なテーマを扱うことによって、よりリアリティのある恐怖を感じるように作られています。

ルピタ・ニョンゴの演技

ジョーダン・ピールの作品において注目すべきポイントの1つは、登場するキャストたちの狂気じみた演技です。

「ゲット・アウト」では不気味に笑いながら涙を流す女性のシーンがかなり印象に残ったのですが、本作では主演のルピタ・ニョンゴの演技が素晴らしいです。

彼女は主人公のアデレードとそのドッペルゲンガーであるレッドの両方を演じています。 

ドッペルゲンガーの狂気じみた演技に鳥肌がたちますが、物語が終盤に進むにつれて主人公のアデレードがだんだんと凶暴化していく姿も恐怖を煽ってきます。

本作を観る前に押さえておきたいポイント

本作には恐怖の中にも力強いメッセージが込められていて、その1つは「貧富の差」といった格差社会の抱えている問題です。

これに関連して重要な伏線が貼られているのですが、実際にあった出来事として存在するため事前に押さえておくことをおすすめします。

Hands Across America

1986年に行われたアメリカの東海岸から西海岸まで人々が手を繋いで結ぶというチャリティーイベントです。

本作においては主人公アデレードの幼少期を描く序盤のシーンで登場します。

当時を知らない人からしたら何のイベントだか分からないと思うので見落としてしまうと思いますが、物語の中で重要な出来事として扱われていたので概要だけでも押さえておきましょう。

このイベントは貧しい人を救うために実施されたもので、人々が手を繋いでアメリカを横断することには成功したのですが、イベントで集まった寄付金は貧困問題を解決するにはわずかなものでした。

そして現在においてもニューヨークの地下鉄で生活をする人がいるなど、アメリカの貧困問題は解決していません。

「貧富の差」という社会が抱える2つの側面をテーマにした本作において、Hands Across Americaというイベントはかなり重要な伏線となっています。

「アス」を観た感想(ネタバレあり)

※以下の項目では本作のネタバレを含む記載がされているため、まだ観ていない人はここで読むのをやめることをおすすめします。

鑑賞して思ったことは前作の「ゲット・アウト」よりも恐怖を感じたということです。

ちなみに、扱っているテーマの切り口やキャストの顔ぶれ、音楽の雰囲気などは「ゲット・アウト」に軍配が上がると思います。

では、「アス」で描かれた恐怖が「ゲット・アウト」を上回る点について解説していきます。

誰もが恐怖を感じる現実に近い設定

「ホラーとは、リアルに感じるほどより効果を発揮する」とジョーダン・ピールがインタビューで答えているように、本作では観客がよりリアルに感じる設定がされています。

前作の「ゲット・アウト」では人種差別をテーマに黒人の主人公に迫る恐怖を描いていました。

これに関してはのちに解説を読むと腑に落ちるところがあったのですが、何も知らない状態で観ているとなかなか恐怖の裏に隠された意図を汲み取ることが難しかったと思います。

その点、本作では現実により近い設定として富裕と貧困、格差社会の闇をテーマとしています。

これは各国に共通する問題であり、何も本作の主人公であるアデレードの家庭にのみ襲いかかったことではないということが重要です。

一家を襲った"私たち"は、姿かたちこそ瓜二つの存在ですが、生まれ育った環境はまったく違っています。アデレードのドッペルゲンガーであるレッドの口からも貧しい生活をしていることが語られています。

豊かな生活を送っていアデレード一家と、地下で苦しい生活を強いられていた"私たち"。

自分たちと同じ姿をした人間が真逆の生活を送っているという設定は、これを観ている観客たちに「もしかしたら自分たちも苦しい生活をしていたのかもしれない」という想像を掻き立てます。

普段、街中を歩いている中でもホームレスの人々を見て、行き場のない気持ちを感じることは誰にでもあるはず。
本作では、自分と同じ姿をしたドッペルゲンガーという存在を通して逃げ場のない感情をさらに強めています

そして本作では"私たち"が襲いかかってきて、逃げてもどこまでも追ってくる。"私たち"と戦うしかないという状況が、より恐怖心を煽ります。

そして、Hands Across America運動も貧しい人々を救う目的のチャリティーイベントであったことも、本作のテーマを印象付けるうえで重要な役割を果たしています。

当時のアメリカはレーガン政権であり、富裕層に対しての減税が政策として取り入れられていました。そのため、徐々に国内での貧富の差があらわれてきました。

そんな中行われたHands Across Americaでも集められた寄付金は十分な金額ではなかった。これを境に現代に至るまで、アメリカでは貧富の差はどんどん広がっていったのです

こうした歴史的な背景を頭に入れておくと、ラストで大勢の"私たち"が手を取り合ってHands Across Americaを再現していたシーンは、現在においても格差社会の問題は消えていないという風刺が効いていて現代人にはかなり刺さるシーンだったと思います。

自分でさえ自分自身を理解することができない

本作では物語の最後に1つの裏切りがあったことも印象的です。

1986年、主人公のアデレードは"私たち"と対峙していました。そこで自分のドッペルゲンガーであるレッドに首を絞められ、地下世界に閉じ込められます。

アデレードに代わって地上に出てきたのはドッペルゲンガーであるレッド。失語症となってしまったという設定は、地上に出てきたレッドは地下で言葉を発したことがなかったから。

そして現在、地下世界の"私たち"を引き連れて地上に上がってきたのは実はアデレードで、地下に閉じ込めたレッドに対しての復讐が真の目的であったように思えます。

この大きな落とし所に込められたメッセージとしては、「自分でさえ、自分自身を理解することができない」というものではないかと思います。

アデレード(実はレッド)とともに恐怖を乗り越えた観客はかなり感情移入してしまい、最後の最後で盛大に裏切られるわけです。

この裏切りは、「もしかしたら自分にもドッペルゲンガーがいて、その昔に入れ替わっていたのかも」「いつの日か自分自身に復讐をされるのではないか」という後味の悪い恐怖を残します。

このように、人間であれば誰しも感じたことがあるであろう潜在的な恐怖に切り込んで、美しい映像と不気味な音楽が恐怖を助長しているハイセンスなホラー映画でした。

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